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続編 第二章 愛するからこその独占欲8

Penulis: ひなの琴莉
last update Terakhir Diperbarui: 2025-01-19 17:50:30

   *

今日は事務所に所属しているタレントさんや、働いているスタッフが集まって呑み会が開かれていた。

大会議室でオードブルが広げられていて、缶ビールを片手に雑談をしている。

「美羽さん、お疲れ様」

「お疲れ様です」

声をかけて回っている大澤社長は、私のところへも話しかけに来てくれた。

「仲よくやってる?」

「はい、お陰様で」

「そう。楽しく暮してね」

そう言ってまた次の人のところへ行ってしまう。

過去にあんなに反対されていたのに今ではこうして普通に話しかけてくれるのが不思議でたまらない。

でも私たちが乗り越えなければならない難だったのかも。

テレビで活躍されているタレントがいっぱいいて、まるでテレビの中に入ったような気持ちになった。

若いタレントさんが近づいてきたのでお酌をする。今売れ始めているイケメン俳優だ。

「ありがと」

「いえ」

ニヤリとして顔を近づけてきた。

「お姉さん……見たことない顔だな。最近、入ったの?」

「……はい」

「へぇ。色が白くて美人だね」

「ありがとうございます」

いかにも軽そうな雰囲気で、対応に困っていると、大くんがさり気なく近づいてきた。

若手俳優は「おはようございます」と礼儀正しく挨拶すると、大くんは「おはよう」と言って微笑んだ。

「話している最中悪いけど、彼女のこと借りるね」

大くんは私の手を引いて若手俳優から引き離した。

そして、廊下へと連れて行かれる。

「美羽、この業界は色んな人がいるから気をつけろよ」

「べつに話しかけられただけだよ」

額をツンと人差し指で突かれた。

「危機感が少なすぎるんだって。あいつ美羽のことそういう目で見てただろ。気をつけろよ」

「ごめんなさい」

見つめ合っていると「お熱いこと」と声が聞こえて驚いて見ると、黒柳さんが壁に背をつけて腕を組みつつ見ている。

それでも、大くんは慌てる様子はない。私は驚いてそばから離れた。

「黒柳もそろそろ結婚してあげなよ。彼女もお年頃だろ?」

その口ぶりから大くんは、黒柳さんが付き合っている人を知っているようだ。

誰にも言うなと言っているはずなのにメンバーは知ってるのかな。

「大樹……。俺と芽衣子が付き合っているって教えたの?」

「いや」

「そう」

つぶやいた黒柳さんは、私を見つめた。

「そういうことなんだ。でも、誰にも言わないでね」

私はとりあえずコクリとうなずいたが、芽衣
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